公民館の風NO.2

公民館の風   NO.2(通算634号) 2010年12月19日発行

●日本公民館学会の研究大会が開かれました●

 12月4日、5日の二日間、筑波大学を会場に、第9回の研究大会が開かれました。
 初日の午前中の課題研究Ⅰは、「公民館職員研究の到達点と課題を探る―専門性論を中心として― 」をテーマに行われました。植原孝行氏(群馬県 元高崎市南公民館次長)が発題として発言され、「公民館職員研究の到達点と課題を探る―専門性の内容検討を柱として―」として上杉孝實氏が(京都大学名誉教授)、また、「公民館の現場が求める職員の専門性」を水谷 正氏(三重県公民館連絡協議会長)が報告されました。
 それに対して金田光正氏(埼玉県富士見市鶴瀬公民館長)が埼玉の公民館の実態を含めてコメントを述べられました。職員問題は何と言っても公民館のありようを決める最重要要素だけに、今後の研究成果が待たれます。
 その後の、自由研究発表はA、B2室に分かれて行われました。筆者は、谷 和明(東京外国語大学)、手打明敏(筑波大学)両氏による「ベトナムにおけるCLCの現状と課題 ―CLC職員へのアンケート調査をもとに― 」と、地元岡山の山本秀樹(岡山大学)、北川文夫(岡山理科大学)両氏による「 ESDを地域において実践する場としての公民館の役割とその国際モデル形成についての報告が行われた、Aの方に参加しました。
 というのも、岡山のお二人の報告には、大安喜一(ユネスコ・ダッカ事務所)氏と筆者の名もプログラムに掲載されていて、質問があった時にはコメントをと求められていたからでしたが。
 ちなみに、岡山のお二人は、今回の発表を機に会員となってくださったのですが、北川氏は「岡山市の公民館の充実をすすめる市民の会」の代表、山本氏も副代表ということで、岡山市の公民館の移管問題でも市民の立場で奮闘されている方です。
 なお、B室では、「自治体の再編と公民館の役割―飯田市における地域自治組織導入をめぐって―」が行われていて、こちらもぜひ聴きたい内容でした。
 総会前には、特別報告として、岡山市の田中純子さんが、「岡山市の公民館市長部局移管問題が公民館に問うもの」をテーマに、経過や現状、自分たちの受け止めや今後の取り組みについて報告しました。
 初日の最後のプログラムは総会で、この場で広島大学の小池会長から手打新会長へのバトンタッチが行われ、筆者も理事の一人として加わることになりました。
 初日夜の交流会では、地酒もワインも準備され、筑波大学の和太鼓のサークルの学生さんたちに寄る威勢の良い太鼓のパフォーマンスも行われて、場を盛り上げてくださいました。
 二日目の午前中は、課題研究Ⅱ「公民館の国際比較研究の展望を切り拓く」が行われました。これには、ACCUの柴尾さんも登壇されました。内容は、谷会員による「公民館の国際比較研究の課題」についての報告。そして、柴尾さんによる「アジアのCLC関係者がみるKOMINKAN」という報告。さらに、首都大学東京の金会員による、韓国における公民館をモデルとした住民自治センターはどういうもので、公民館との異同は何か、公民館の東アジアモデルとして考えられないのかを提示する報告の3本でした。
 そのうち、柴尾さんは、アジアのCLC関係者が公民館を知る契機を、ACCUがかかわったことを中心に3段階に分けて紹介されました。第1フェーズでは、2003年のCLC関係者による宇都宮市の公民館視察があり、2006年には、松本市に1週間を超える視察に入って市民とも深く話し合っていること。そして第2フェーズとしては、2007年の岡山での公民館サミットと、その後毎年開催されている国際シンポを紹介されました。その中で、岡山宣言を配布して説明されました。その岡山宣言作成の場にいて、外国からの参加者と、この文章で良いかとか論議した記憶がよみがえり、なんだか、少し面映ゆい感じもしたのでした。柴尾さんが言う第3フェーズは、国際成人教育会議へ向けての準備の中で、海外の公民館や日本の社会教育制度への注目に気付いた文科省が、公民館の海外への発信のための冊子や社会教育法や制度についての冊子を国として初めて作ったこと。また、文科省の社会教育部局の幹部が実際に東アジアのCLCをれ訪問に行ったりしていることも紹介されました。

 討論では、ユネスコ・ダッカ事務所の大安会員も発言され、いよいよ国際比較研究がスタートしたのだという感じがしました。岡山は、こうして取り上げられている部分では、一歩進んでいるわけで、実際にCLCを訪問する機会はまだ得られていませんが、関心を持って、具体化の道筋を考えたいものだと考えています。
 研究大会の最後を飾るのは、地元つくば市の公民館に関しての公開シンポジウムでした。つくば市は来年4月に公民館を市長部局に移管し、地域交流センターに衣替えするということで準備を進めています。これは明らかな公民館の廃止。公開ということで、地元の市民の方の参加もあり、会場となった広い国際会議場も少しにぎやかになりかけていました。
 シンポでは、3分野の市民活動の当事者たちが公民館をどう見ているかの話と、生涯学習課の担当者の、行政の立場からの話があり、それをもとに質問や討論が行われました。
 率直な感想は、つくば市はもともと公民館の活動レベルに少し問題があったのではないかと感じられるということ。これはさいたまし市の片野さんも指摘されましたが、市の方針で移管してここを強化するという項目は、すべて公民館としてやっていけるし、今もやっていなければいけないはずのものばかり。それができていないから移管だという理屈に聞こえてしまったのです。登壇者たちは遠慮していましたが、公民館にはとても期待していることが分かり、それをどこまでこの場で率直に語っていいのか、測りかねている感じもありました。
 こうしたパターンでの移管が各地で進んでいることは事実で、その責任の一端は、公民館や社会教育部門で働いている職員にあるし、社会教育や公民館の研究者にもあるはずだと思います。
 どなたか、研究大会の感想など、お寄せいただけると喜びます。

●岡山市の公民館の動きのその後●

 公民館学会の研究大会で、岡山市の田中純子さんが報告されましたが、岡山市の公民館の市長部局移管をめぐっては、大きな変化がありました。
 11月議会で市当局が移管はせず、公民館職員には市長部局のまちづくり担当の職を併任させ、まちづくり担当部局の職員に公民館の仕事を補助執行させるという方針を示しました。「移管」ではなく「統合」だというのが、当局の言い分。当局は方針変更ではなく、もともとそう考えていたなどと言っていますが、この間の市民と職員の運動が、当局の姿勢を変えさせたことは間違いありません。
 しかし、これで終わったわけではなく、何をどう統合しようというのかの内容も不明確で、市長武器局の職員が公民館事業を補助執行するというのも問題ありでしょう。今後の取り組みが期待されています。


●「公民館の風」のホームページを開設●
 先輩にならって、「公民館の風」のホームページを立ち上げました。
 どこまでの内容を載せるべきか、悩みましたが、まずは全部載せちゃえってことで、スタートしました。発行回数が増えれば、全部載せるってわけにはいかなくなると思いますが。
 こちらもご意見をいただけると幸いです。アドレスは次のとおりです。

http://kominkanwind.web.fc2.com/

●岩本陽児さんから 「第一号の送信ありがとうございます」●
 私は1963年生まれ。九州出身で、上野景三先生が佐賀においでになった頃、福岡で大学院生でした。90年代は外地暮らしで、2002年に小林ぶんじん先生の後任として和光大学に着任しました。
 地元川崎市で2008年まで社教委員。昨年サバティカルのあと、今年は(4月から区役所に移管となった)大型公民館「麻生市民館」の運審や、数年前に市長部局に移管となった宿泊施設「青少年の家」運営協議会のメンバーとして、あれこれ考えながらこの先を見極めたいと思っているところです。
 個人的には、大学内の「和光畑」と、新宿から西に伸びる私鉄「小田急線」沿線の図書館が仲良くなる会の世話人。川崎市の姉妹都市、韓国富川(プチョン)との図書館交流メンバーでもあります。
 岡山から吹く公民館の風、楽しみにしております。今後ともよろしくお願いいたします。

●石井山竜平さんから●
 楽しい話題ではないのですが、実は仙台でも、市民センター(条例上は公民館)の市長部局移管の提案が出されました。この段階からの提案で23年度には移管 という、なんともスピーディーでトップダウンでインスタントな展開です。
 仙台の場合、公運審や社教委員の会議 がぎりぎりの防波堤です。移管計画は、今月9日に開催された公運審ではじめて公式に移管計画が示されたのですが、以下の新聞報道が示すように「紛糾」となりました。(僕も公運審委員の一人でして、その場では「たまたま」もっていた岡山の移管の再検討を呼びかけるパンフレット、大いに活用させていただきました。)
 今川義博さん(仙台市青葉区中央市民センター)も労働組合を核に公開学習会を計画(12月8日 18:30~)されています。岡山の闘いで学んだことを、これからの仙台での議論に活かしたいと思っているところです。
【河北新報 2010年11月10日 】
「区に市民センター移管 11年度から 仙台市が計画示す」
 仙台市市民局と市教委は、各区に設置している中央市民センターを2011年4月に市教委から区に移管する計画をまとめ、9日、宮城野区の市中央市民センターで開かれた市公民館運営審議会で示した。
 計画によると、青葉、若林、太白、泉の各区の中央市民センターの所管を市教委から区に移し、中学校区単位の59カ所の市民センターは区の特色にあった事業を展開する。宮城野区の氏中央市民センターは市教委の組織と位置づけ、市全体の生涯学習を総括的に推進する。市民センターの運営経費は、従来通り市教委の予算として計上する。計画には、きめ細やかな行政サービスを担う区役所の機能を高める観点から、区とセ
ンターとの連携の重要性を明記した。しかし、審議では委員から「行政部局に移せば社会教育施設としてのセンターの質が低下する」「市民も交えて話し合うべきだ」などの意見が出て紛糾。12月中旬に再度、審議することを決めた。
 市教委の西城正美理事は「地域政策を推進する上で区役所の体制強化は大事だ。区と市教委が共通の認識を持って、市民力や学びを高める市民センターにしていきたい」と述べた。
(石井山さん、ごめんなさい。きっと許してくださると思って載せちゃいました。公開学習会も開かれたでしょうし、石井山さんか、今川さんから仙台の最新の情報もお願いできると嬉しいですね。)

●福井市円山公民館の松井さんから●
 この度は「公民館の風」の再刊おめでとうございます。また、うれしく思います。
 いろいろな情報が得られ、自分の地域と比較しながら、地域に根ざしたものにしていくために大いに参考にしていきたいと思います。
 岡山の厳しい状況、いろいろ見聞きしています。自治振興の視点からの波はどこも同じですね。でも、視点を変えれば、どんな状況も切り返して、考える力、行動する力を持っている人材がそろっていらっしゃるので公民館(職員)の底力を出せるのではないでしょうか?期待しています。
 これからも、いろいろな情報交換よろしくお願いいたします。

■やっと2号を発行■
第1号を出してから、早くも1カ月。時間がたつのは早いもの。月刊で
は少なすぎますね。ごめんなさい。文人先生に公民館学会でお会いした
際にも、励ましていただきました。時には新聞記事も載せたりして風を
吹かせないと、とアドバイスも。感謝、感謝です。
というわけで、今号は再刊号への反応として寄せられた「風」も載せま
した。皆さん、感想でも何でもけっこうです。ぜひメールをくださいま
せ。(M)

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